新時代を開く巨大インフラ投資 市場経済の中での政府の役割の一つは、社会にとって必要なことであるにもかかわらず、民間では不可能なこと、あるいは放っておくと為されないこと等を税金を使って行うことである。その意味で公共インフラ

経済政策論文「これが本物の成長戦略だ」

新時代を開く巨大インフラ投資

市場経済の中での政府の役割の一つは、社会にとって必要なことであるにもかかわらず、民間では不可能なこと、あるいは放っておくと為されないこと等を税金を使って行うことである。その意味で公共インフラの整備は政府の重要な仕事と言ってよいだろう。一方、政府が行う産業政策については、政府には成長産業を見分けたり、育てる力はないとして、どちらかといえば否定的なのが経済学の通説である。確かに、トヨタやホンダ、ソニーやパナソニックなど、日本を代表する大企業も、政府の支援によって成長したわけではなく、自由市場の中で競争に揉まれながら、自力で成長していったというのが真相だ。したがって、政府は民間経済への恣意的な介入を差し控え、自由な競争に委ねるべきで、むしろ規制緩和などを通じて競争的な環境を整えるのが政府の役割とされている。

市場経済を通じて繁栄を目指す以上、政府の役割についてのこうした考え方は大きな原則として踏まえなければならないが、しかし例外も存在する。つまり、①民間の営利企業が自前で集めるには大きすぎるほどの巨額の資金を必要とするもので、②収益を生むまでに長い時間を要するもの、そして③人類社会の発展を考えれば必要性・必然性の高いもの、については政府が関与して事業を進めるほかはない。

このような政府の関与が正当化される事業として、リニア新幹線の建設、極超音速旅客機の実用化、宇宙旅行技術の確立、1000メートル級超々高層ビルの建設などが挙げられる。これらは、巨額の資金が必要で、完成までに時間がかかり、収益もすぐには見込めない。しかし、移動時間の短縮や宇宙というフロンティアの開拓、都市空間の有効活用という点で必然性の高い事業と判断できる。これらは広い意味での公共インフラ整備と言うこともでき、こうした巨大な交通インフラ、都市インフラの整備によって、密度の濃い経済活動が可能となり、潜在成長率は一段と高まるものと考えられる。

リニア新幹線については現在、JR東海が2027年に東京―名古屋間の開業、2045年に名古屋から大阪までの延伸完成というタイムスケジュールで計画中だが、東海道新幹線が着工から5年半で開業したのを考えれば、あまりに時間がかかり過ぎと言わざるを得ない。結局、JR東海として株主への配当や財務的健全性を維持しながら、9兆円超の建設費を全額自力で調達しようとしているがゆえに、これだけの時間を要してしまうのだ。ならば、政府が優先株を引き受けるなどしてJR東海に資金投入してやれば、建設のスピードは速まり、開業までの時間を大幅に短縮することができるはずである。できれば2020年頃までには東京―大阪間の開通を実現したい。東京、大阪、名古屋の三大都市が1時間圏内で結ばれることの経済効果は極めて大きいと期待できる。

極超音速機(想像図)(提供:JAXA)

極超音速機(想像図)(提供:JAXA)

極超音速旅客機は、次世代の航空機とされる超音速旅客機のさらに次の世代の航空機である。超音速機の飛行速度はマッハ2だが、極超音速機はマッハ5を目指している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2025年に無人実証機により太平洋を2時間で横断する飛行実験を行うことを構想中だ。極超音速旅客機が完成すれば、日本から米国へ日帰りで出張することも可能となるため、非常に大きな経済効果が見込まれる。開発費は兆円単位でかかることは確実だが、海外でも既に欧州航空・宇宙・防衛大手EADSがパリ―東京間を2時間半で結ぶロケット旅客機を2050年までに開発という方針を打ち出しており、日本としては極超音速旅客機をできるだけ早期に実用化して、世界標準の座を確保しなくてはならない。例えば、実証実験の行われる2025年から10年後となる2035年頃の実用化を目標に設定することも一つであろう。

HTV-R オプション1(非与圧部内搭載型)(提供:JAXA)

HTV-R オプション1(非与圧部内搭載型)(提供:JAXA)

宇宙旅行技術に関しては、2020年頃までに有人宇宙飛行技術を確立し、2050年頃までに一般の人が月旅行へ行けるようにするという目標を持って取り組みたい。現在、米露中の3か国が有人宇宙飛行技術を有しているが、日本としても早期にこれを確立し、次のステップへと向かうべきである。関係者によれば、有人宇宙飛行技術の確立に必要な金額はおよそ1兆円と見込まれているが、宇宙産業の無限の可能性を考えれば、決して高いものではなく必要な先行投資と考えられる。政府主導で宇宙旅行技術を開発し確立した後、そのノウハウを民間に供与していけば、いずれ宇宙関連産業が新しい成長産業として立ち現われてくるだろう。

1000メートル級の超々高層ビルについては、地震対策も含め技術的には既に建設可能であるが、単なるオフィスビルではなく、住居や店舗、学校、役所、病院など、町の機能を一通り収容し、一棟当たりの利用人口が数十万人規模となる巨大建築物を構想している。これも数千億円から兆円に及ぶ巨大事業となろうが、東京や大阪は現時点でも海外の主要都市に比べて高層ビルの数が少ないので、限られた都市空間をできるだけ有効に活用し、集積の経済を働かせるために是非とも建設したい。これによって都心部に住戸を大量供給できればその価格が下がり、多くの人々に職住接近の生活が可能となる。空間的に上に伸びた分、地上の土地は緑地公園等にしていけば、ヒートアイランド対策にもなるだろう。

さらに、現在の日本にとって、ある意味で最も必要なインフラとして、防衛力の整備がある。一国の平和と安全を守り、安心して経済活動に取り組める環境を創り出すという意味で、防衛力は経済社会に不可欠のインフラであり、これを支える防衛産業も成長させていかなくてはならない。米国の巨額の公的債務によって在日米軍にも撤退圧力がかかっている中で、中国・北朝鮮の軍事的脅威は高まる一方なのだから、日米同盟は堅持しつつも、そろそろ日本も自分の国は自分で守れる態勢にシフトすべき時期に来ている。具体的には、シーレーン防衛のための原子力空母や核抑止力としての原子力潜水艦(SLBM搭載)、制空権維持のための次世代戦闘機等を開発し、配備していかなくてはならないだろう。こうした防衛力整備のための投資によって、最先端技術の研究開発も進み、民生産業への技術波及効果が期待できるし、インターネットやGPSのように社会に新産業をもたらす技術が生み出される可能性もある。したがって、防衛費は、装備品調達や人員増強、研究開発推進のため、GDP比で現状の1%から英仏並みの2%程度へと増やしていく必要があるだろう。

ちなみに現在、福島第一原発の事故を受けて、国民世論も「脱原発」に傾いているかに見えるが、メディアによっては放射能の恐怖ばかりが強調されているため、冷静で合理的な思考ができなくなっているという面が強い。高コストな再生可能エネルギーを無理に導入すれば国民生活や産業活動に打撃を与えるし、エネルギー安全保障の観点からも少量の資源で大量の電力を生み出せる原子力の利用はやはり欠かせない。何より、日本で原発が稼働してプルトニウムが生成されていること自体が、中国や北朝鮮に対して潜在的な核抑止力として働いているのである。政治家やメディアには、国民に間違った選択をさせないように導く責務があると言えよう。

まとめ──高い成長なくして財政再建なし

以上、名目値での国民所得倍増を達成するための金融政策、経済成長戦略について記してきた。実際には、新しいビジョンが国民に浸透し、ここで述べられた政策がそのまま実行されれば、実質4%成長では済まず、さらに高い成長が可能になると思われる。インフレ目標政策による金融政策運営で物価や金利の極端な変動を抑えつつ、そのような高い経済成長が続けば、世上問題視されている政府の財政状況を改善していくこと(具体的には、公的債務残高の対GDP比を低下させること)も十分可能である。高い経済成長なくして、財政再建はあり得ないのだ。

わが国は今こそ震災や原発事故の逆境を乗り越え、新しいビジョンを掲げて飛躍的な経済発展を目指さなくてはならない。世界に対して責任を担おうとする気概こそ、日本の次なる時代を開く力となるであろう。

さらなる詳細は筆者の近著『日本経済再建宣言』(共著、幸福実現党刊)をご参照ください。

『日本経済再建宣言』
『日本経済再建宣言』
(ついき秀学、黒川白雲、中野雄太共著/幸福実現党)

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立木 秀学
(ついきしゅうがく)
東京大学 法学部 第3類(政治コース)卒業後、幸福の科学入局。財務局長、専務理事などを歴任し、幸福実現党に入党。2010年7月から2012年12月まで幸福実現党党首を務める。
現在、HS政経塾塾長。
HS政経塾公式サイト
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