9月2日、野田佳彦新内閣が発足しました。野田首相はかねて復興財源確保のための増税や、社会保障と税の一体改革として消費税増税を唱えていますが、東日本大震災でダメージを受けたデフレ下の日本で増税は致命的な誤りです。 日本経済

経済政策論文「これが本物の成長戦略だ」

9月2日、野田佳彦新内閣が発足しました。野田首相はかねて復興財源確保のための増税や、社会保障と税の一体改革として消費税増税を唱えていますが、東日本大震災でダメージを受けたデフレ下の日本で増税は致命的な誤りです。

日本経済の再建に必要なのは増税ではなく、経済成長です。明確な未来ビジョンに基づく実効性ある政策によってこそ、日本経済を低迷から脱却させ、成長軌道へと導けることを本稿では明らかにします。

いまどき、「所得倍増」を真顔で訴えると、半世紀も前の人と間違えられるかもしれない。1960年に当時の池田勇人首相が打ち出した経済政策が、言わずと知れた「所得倍増計画」。デフレ下にあって少子高齢化が進み、潜在成長率は1%弱と言われている今の日本で、しかも東日本大震災と福島原発事故に打ちのめされている現状を前にして、高度成長時代の語彙で経済政策を語るなど時代錯誤も甚だしいと言われそうだ。

経済を10年かけて実質倍増させるには毎年実質7%の成長が必要で、インフレ率が3%とすれば、名目では10%の二桁成長を続けなければならない。今の日本で、いきなり「そのような高成長を」と言っても、現実味が乏しく感じられるのは確かだ。しかし、名目値で10年倍増(毎年名目7%成長)を目指すのであれば、インフレ率が3%なら、必要な実質成長率は4%である。

インフレ目標採用国の平均成長率と平均インフレ率

インフレ目標採用国の平均成長率と平均インフレ率

今の日本にとって4%の成長率さえ高すぎるというのが、大方の反応であろう。だが、2~3%のマイルドなインフレの下、実質成長率を3%程度に導くことは十分可能である。というのは、イギリス、カナダ、ニュージーランド、スウェーデン等のインフレ目標を採用している先進国は、リーマンショック前の2007年まで平均で3%程度の実質成長率を実現していたからだ。他の先進国にはできて、日本だけができないということはあり得ない。したがって、日本もインフレ目標を採用して3%程度の成長率を達成できるようにした上で、さらにあと1%の成長率を上乗せする努力を行えばよいのだから、実質4%成長は十分に射程の範囲内だ。

とはいえ、そもそも日本は15歳から64歳の生産年齢人口、すなわち労働力が減りつつあるのだから、高い経済成長は無理だという人もいるだろう。しかし、一人当たりの名目GDP(2010年)で見れば日本は世界16位の4万2,820ドルで、首位のルクセンブルク10万8,831ドルは別に措くとしても、8位のスウェーデン4万8,874ドル、9位の米国4万7,283ドルと比べても10%以上の開きがある。したがって、生産性を向上させて、一人当たりGDPを伸ばしていく余地は十分にあると言ってよく、現状のレベルで諦めてしまうのは敗北主義にすぎない。

世界の一人当たり名目GDP(1~16位)

世界の一人当たり名目GDP(1~16位)

日本の名目GDP推移(1980~2010)

日本の名目GDP推移(1980~2010)

日本は、特に1998年以降、本格的なデフレ経済に陥り、名目GDPは516兆円が天井となって、これを上回る拡大ができなかった。結果、賃金・給与も名目値が下がり、景気が良くなっても実感が伴わない状態が長く続いている。これでは国民は元気の出しようがない。何はともあれ、まずは経済が拡大し、人々の名目上の所得も増えるという感覚を取り戻さなければならない。だからこそ、日本経済再建に向けた最初の取っ掛かりとして、「名目7%、実質4%の経済成長を10年続けて、GDPや所得の名目値を倍増する」という、分かりやすい具体的目標を掲げるべきなのだ。

日本が持つべきビジョンとは

日本がこの20年停滞を続けたのは、適切なビジョンを持つことができなかったが故である。欧米先進国へのキャッチ・アップは1980年代後半のバブル期で達成した。しかし、その後は何を目指せばよいのか分からなくなってしまい、停滞を続けるよりほかにしようがなかったのだ。国民に対し、国が進むべき方向性を示すビジョンを提示するのは政治家の役割である。しかし、この20年間、経済政策の面でこの役割を十分に果たすことのできた政治家はほとんど皆無である。

では、これからの日本が持つべきビジョンは、どのようなものか。結論から言えば、それは「世界一にして世界最先端の経済社会の実現」ということである。「世界一」というのは、経済規模では中国に追い抜かされて世界3位に落ちたばかりであり、その達成は容易ではない。しかし、日本は長らく世界2位の座にあったのだから、そこから上を目指すのであれば、やはり世界一しかないだろう。また、一人当たりGDPでの世界一なら人口の大きさは関係ないので、より手近な目標とすることができる。いずれにせよ、政治家は自国を世界一豊かにするというビジョンを持ち、その実現に向けて常に努力しなければならないのだ。

次に、何のための世界一なのか。それは、世界最先端の文明を築き、その文明の高さと豊かさでもって世界に貢献していくためである。これまでは、主に米国がその役割を担っていたと言える。もちろん米国には世界に対して常に良いことばかりしてきたとは言えない面もあるし、冷戦終結後の経済的グローバリズムが広がる中で、マクドナルドやコカ・コーラ、ジーンズ等で象徴される米国型文明の普及が進んだことに対しては賛否両論がある。ただ、20世紀以降、米国が自動車や家電、航空機、ITなど、現代文明を支える主要産業を生み出し、世界をリードしてきたことは紛れもない事実だ。

これからの日本もそのような新産業創出型の経済社会を目指さなくてはならない。新しい産業を生み出し、これを世界にも広げていくことで、自国経済を成長させることができ、かつ世界経済の発展にも寄与できる。現在の日本の代表的な基幹産業は自動車と家電だが、いずれも米国発のものである。しかし、これからは日本発の産業を次々と創造していくことを志さなくてはならない。そのような新産業創出型の経済成長であれば、新しい経済的付加価値が次々と生み出されてくるので、労働人口減少によるマイナスのインパクトを乗り越えていけると考えてよいだろう。

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立木 秀学
(ついきしゅうがく)
東京大学 法学部 第3類(政治コース)卒業後、幸福の科学入局。財務局長、専務理事などを歴任し、幸福実現党に入党。2010年7月から2012年12月まで幸福実現党党首を務める。
現在、HS政経塾塾長。
HS政経塾公式サイト
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