一昨日、与党・民主党内で「東日本大震災復旧復興対策基本法案」の素案がまとめられたという報道がありました。その中で復興財源としては、「復興税」の新設と「震災国債」の日銀引き受けとが盛り込まれているようです。 増税の場合、法

4/2 震災増税はあり得ない。国債の日銀引き受けを。

一昨日、与党・民主党内で「東日本大震災復旧復興対策基本法案」の素案がまとめられたという報道がありました。その中で復興財源としては、「復興税」の新設と「震災国債」の日銀引き受けとが盛り込まれているようです。

増税の場合、法人税や消費税の税率引き上げ、あるいは所得税に一定割合の「社会連帯税」を上乗せすることが検討されています。

しかし、今月18日のフジサンケイ・ビジネスアイのコラム(bit.ly/fMeBSQ)でも書いた通り、震災のダメージとそれに伴う自粛ムードでマインドが極めて悪化している中、増税を行えば景気はさらに落ち込むので、これは絶対に避けるべきです。

確かに震災で工場が操業を停止し供給不足に陥っている面もあるでしょうが、その一方で東日本では節電の必要から街の照明は減らされ、店の営業時間は短くなり、積極的にお金を遣おうという気は大きく削がれています。もともとデフレだったところに、マインド悪化でさらにデフレ圧力が大きくなっているといえます。既に、3月の自動車やテレビの国内販売は前年比でそれぞれ3割減と1割減で推移していることが報じられています。

にもかかわらず、増税を主張する識者は後を絶ちません。財務省の洗脳を受けて、どうしても既存の政府債務の大きさが気になるのでしょう。

例えば、これから復興に向けて民間の投資資金需要が増大するので、国債を増発するとクラウディングアウトが発生して高金利・円高になりかねないため増税せよ、という人がいます。しかし、もともとデフレである日本では、これは国債を日銀に引き受けさせれば金融緩和効果が伴うので避けることのできる問題です。

国債の日銀引き受けについては、現在のデフレよりも将来のインフレを警戒して、消極的な人もいます。国内的には震災による供給能力の低下と復興需要の発生があり、国際的には資源価格の上昇とこれによる長期金利上昇の恐れがあって、物価上昇よりも金利上昇が先行する「悪いインフレ」のリスクが大きいなどと懸念しています。

しかし、国内的には復興事業によりインフラが整い、供給能力も回復するので、一時的にインフレ圧力が高まったとしてもやがてそれは解消していくでしょうし、海外からの影響といっても、これまで世界各国がインフレでも日本だけはデフレだったのですから、まずはデフレ脱却を優先すべきです。将来の高いインフレを恐れて、現在のデフレを放置するのは、従来の日銀と同じスタンスであり政策の優先順位の判断を誤っています。

よく言われていることではありますが、1996年は実質経済成長率2.6%とパフォーマンスが比較的良かったにもかかわらず、翌97年に消費税の税率を2%上げて増税すると景気が落ち込み、以前からの不良債権問題と相まって金融危機が起こりました。

2011年度の経済成長率の見通しは、今年1月の段階で政府は1.5%としていましたが、今回の震災を受けて最大0.5%低下すると予想しています。このように景気の悪化がほぼ確実視されている時に増税を行えば、マクロ経済に悪い影響を及ぼすのは必至です。経済政策においては、財政よりも景気を優先しなければならないということを、いい加減常識にしなければなりません。

震災国債の日銀引き受けについては、やはりマスコミも消極的です。1日付の日経新聞では以下のような記事がありました。

(引用開始)

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震災国債の日銀引き受け、市場は疑問視「価格急落招く」
2011/4/1 2:12
 東日本大震災の復興財源として浮上した「震災国債」の日銀引き受けについて、金融市場では実現性を疑問視する見方が多い。「財政規律が緩むとの警戒感から債券相場が下落しかねない」との声が出ている。(中略)
 日銀の国債引き受けは戦前に事例があるが、軍事費増大やハイパーインフレにつながった経緯があり、財政法で原則禁止されている。日銀は現在、資金供給の一環として債券市場ですでに流通している国債を金融機関から買っているが、政府からの直接引き受けは一部の例外を除いて実施していない。
 国債引き受けが実現すれば政府から日銀に国債が直接渡るため、市場メカニズムが働かなくなる。理論的には、日銀が際限なしにお金を刷って政府に渡せるようになり、財政規律が緩む。通貨価値の急落や物価急騰を招くリスクがある。
 市場では「国債の安定消化のつもりがかえって国債価格の急落を招きかねない」(欧州証券)と指摘される。海外ファンドなどが国債売りに動く可能性もある。
 日銀も「国債引き受けは国際的にも禁じ手だ。財政が厳しいなか、国際標準を逸脱したとたんに市場の信認を失う」(幹部)と拒否反応を示す。財務省内でも、あえて信認を失うリスクをおかす必要は薄いとして、慎重論が大勢を占める。

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(引用終わり)

国債の日銀引き受けに反対するときに必ず論拠の一つとされるのが、「日銀の国債引き受けは戦前に事例があるが、軍事費増大やハイパーインフレにつながった」という事実です。しかし、当時はテロ事件を背景に声高に予算増を要求する軍部が存在していましたが、現在はそのような勢力は存在しません。

国債価格が急落するとか、市場の信認を失うとか、関係者は口々に懸念を述べますが、日銀の国債引き受けからハイパーインフレに至るまでには途中でいくらでもコントロールを利かせる余地があるので、杞憂に過ぎません。少なくともデフレギャップ分(直近で20兆円と推計)までなら、日銀引き受けを行っても理論的にはインフレになりません。

このあたりのメンタリティは、国防問題にも通じるものがあります。現状の日本は憲法9条で自衛権に大きな制約を課されていますが、これなども一旦日本が普通の国として軍隊を持つようになれば戦争を起こしかねないという杞憂に基づくものです。

どうも日本のエリート層には、戦前・戦中の失敗に囚われて、直面する課題や自らを取り巻く環境が当時と全く異なっていても、相変わらずその時の“教訓”を墨守し、自縄自縛に陥る傾向があるようです。

しかし、現在の困難を乗り越え、次の新しい時代を開くためには、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」のはそろそろやめにして、真に必要な手立てを用いるだけの勇気を持たなければならないでしょう。

現在、与野党の「大連立」が取り沙汰されていますが、その成否はどうあれ、増税という間違った政策判断を行わないよう厳しい監視が必要です。

立木 秀学
(ついきしゅうがく)
東京大学 法学部 第3類(政治コース)卒業後、幸福の科学入局。財務局長、専務理事などを歴任し、幸福実現党に入党。2010年7月から2012年12月まで幸福実現党党首を務める。
現在、HS政経塾塾長。
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