前回に引き続き、『国家の命運』(薮中三十二著 新潮新書)について述べたいと思います。 本書の中には、日本は外国からの要求に敏感に反応しすぎる傾向がある、という興味深い指摘があります。 かつて日本はアメリカへの輸出が多すぎ

12/25 書評『国家の命運』(その二) マスコミは外国の御用聞きから脱却を

前回に引き続き、『国家の命運』(薮中三十二著 新潮新書)について述べたいと思います。

本書の中には、日本は外国からの要求に敏感に反応しすぎる傾向がある、という興味深い指摘があります。

かつて日本はアメリカへの輸出が多すぎるとして激しいバッシングを受けましたが、今の中国は当時の日本以上にアメリカへの輸出で儲けています。にもかかわらず、アメリカはそれほど中国を批判していません。人民元が安すぎるといって牽制する程度です。

著者がアメリカの友人にこのことを問い詰めたところ、次のように答えたそうです。
「中国に文句を言っても、反応がないからだ。反応しない相手はやりにくい。それに比べて、日本は敏感に反応してくれた。それで、ますます日本叩きも激しくなったというわけだ」

そして、この敏感な傾向を助長しているのが、日本のマスコミです。次のようなお決まりパターンが紹介されています。

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日本の新聞記者が、米国通商代表部(USTR)幹部のもとへインタビューに出向く。記者はそこで、「対日赤字は問題でしょう? さあ、アメリカは日本にどういう要求をするんですか?」と訊く。
「大した問題ではない」などと言えば議会で袋叩きにあうから、相手は、「もちろん、対日貿易赤字は大きな問題だ。是が非でも、改善してもらいたい」と答える。
記者はさらに後押しをする。「なかでも大事な問題は何でしょうかね? 例えば大店法などですか?」
USTR幹部が強く頷く。
翌日、日本の新聞は一面で、「USTR、大店法廃止を迫る。貿易制裁も視野に」と伝え、日本の読者は、「またアメリカの理不尽な要求か」とうんざりする。

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著者は「これではマスコミはアメリカの御用聞きかマッチポンプ、日本へ向けて懸命に火種を吹き起こしているようなもの」と評しています。

前回、日本の外交が、基本的に受け身で主体性が確立できていないことについて述べましたが、その結果というべきか、あるいはその原因というべきか、マスコミも国益を確保することよりも他国の御用聞きに堕してしまっているのは、残念な限りです。

実は、最近も似たような動きがマスコミに見られました。当ブログでも取り上げた朝鮮半島有事での邦人救出についてです(12/12 菅首相、朝鮮有事で邦人救出を検討 bit.ly/etTfZ3)。先日15日付の日経新聞(朝刊)に次のような記事がありました。

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韓国 協力拡大には慎重 中国 隣国に十分配慮を
【ソウル=山口真典、北京=佐藤賢】菅直人首相が自衛隊派遣を念頭に朝鮮半島有事の際の日本人救出計画を検討する意向を先に示したことについて、韓国、中国両政府から14日、反発や戸惑いの声が上がった。
韓国の金星煥外交通商相は同日の記者会見で、「日本と事前協議はなかった。どんな脈絡で話したのか分からない」と反発。その上で「日本とは初歩的な安保協力を始めた段階であり、その程度だと理解してもらえればいい」と協力拡大には慎重な姿勢を示した。
中国外務省の姜瑜副報道局長も同日の定例記者会見で「軍事に関わることでは歴史的な経緯があり、日本は隣国の受け止めや懸念に十分に配慮し、慎重に対処すべきだ」とけん制した。
日本の外務省幹部は「自衛隊が朝鮮半島に足を踏み入れることの意味を首相は知らなかったのか」と驚きを隠さない。
菅首相は10日の日本人拉致事件の被害者家族らとの面会で「(邦人)救出に自衛隊が直接出ていって韓国の中を通って行動できるルールは決まっていない。救出に携わることができるような日韓の決め事をしたい」と発言している。

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一面で大々的に出された記事はありませんが、日本の国益よりも諸外国の顔色を窺うスタンスは相変わらずです。おそらくは、韓中両政府の記者会見で日経記者が質問を投げかけ、回答を得たのでしょう。

しかし、韓国の外交通商相は分かるにしても、なぜわざわざ第三国の中国外務省の役人に質問しなければならないのでしょうか。朝鮮半島は中国の“勢力範囲”なので、自衛隊派遣は中国の了解を得なければならないというのでしょうか。

さらにご丁寧に、日本の外務省幹部の、菅首相の“無知”に対する驚きのコメントを添えるあたりに、同新聞が半島有事自衛隊派遣に反対姿勢であることが読み取れます。

私としては、この案件は確かに菅首相が思いつきで言ったのかもしれませんが、国民の生命・安全を守るという意味では必要かつ重要な案件なので、これをきっかけに政府は積極的に取り組むべきだと考えています。日本のマスコミも国民を守る気があるなら、外国の御用聞きに堕して政府の足を引っ張るのではなく、この動きを積極的に応援すべきです。

自国の憲法解釈や他国の感情等を言い訳にして何の対策もせず、朝鮮半島で万一のことが起こって在韓邦人の命が失われてしまえば、取り返しがつきません。

なお、「軍事に関わることでは(中略)隣国の受け止めや懸念に十分に配慮し、慎重に対処すべきだ」と中国政府はいいますが、中国海軍は今年4月に日本の排他的経済水域内(沖ノ鳥島周辺)で軍事演習を行っています。のみならず、この演習のため中国艦隊が沖縄本島と宮古島の間を往復しましたが、その際警戒監視に当たっていた海上自衛隊の護衛艦に中国の艦載ヘリが異常接近するという事件を二度も引き起こしています。隣国への配慮や慎重対処は、まず中国自らが実践に移してもらいたいものです。

立木 秀学
(ついきしゅうがく)
東京大学 法学部 第3類(政治コース)卒業後、幸福の科学入局。財務局長、専務理事などを歴任し、幸福実現党に入党。2010年7月から2012年12月まで幸福実現党党首を務める。
現在、HS政経塾塾長。
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